わたち猫なの 6

 それまでなんでもなかった茅蜩の前の表情が見る見る変化して、寒い寒いって言い始めたの。主から借りたベビー毛布を頭から被ったのにはわたちも驚いたわ。それでも寒がってだんだん狐憑きみたいに眼が吊りあがってきたの。主は二人に向かい合って、その変化をずうっと眺めていたから一番わかっているわけだけど、流石の和尚様もびっくり仰天。だって和尚様の方はさっきまでの怒りと不調はどこへやら、いつもの楽しい彼に戻ってしまい、何でもなかったお弟子の方は異様な精神状態になったわけだもの。おまけに彼女は、翌日一日不調続きだったんですって。こんな事があってわたちには除霊院ってあだ名が付けられたの。そうしたら主は「ついでだから戒名にしていただいたらいいんじゃない?」と言いだし、お坊さんと魔女の合作による戒名が、除霊院暗闇にゃんにゃん大姉って決まってしまったの。勿論法号料は和尚様の法施だから無料なのよ。当節はペットが死ぬと火葬して葬式を出す上、戒名もつけるのが流行なんですって。
 院号料とか法号料ってとても高いものだって後で聞いてびっくりしたわ。
「ねぇ、お母さん皆平和ボケしてるんじゃなぁい。古今東西戦争や災害なんかで死んだ人々は、大きな穴を掘って投げ込まれ、それでおしまいって終わったのにねぇ。今だってあちこちで戦争があって、お葬式をしていたらそこに爆弾テロがあったりして、滅茶苦茶な場所だってあるってニュースでも報道していたでしょ。我が国の戦死した同胞だって、海の向こうで、遺骨収集団が来るのを待っているんでしょ。それなのに院号や法号を付けて貰えないと成仏できないなんて考えは、わたちには歴史観の違う人の言うことに思えるニャーンだけどね。戦時と平和の時が違うのは当然としても………。それにしても法号料の適正価格って誰が決めるのかちらね。欲張りの坊さんかちら?」
「それはお前のいうとおりよ。可愛い顔しているけど、猫の癖にダークは結構批判的なのね」
「それほどでもないにゃ~ん、お母さんほどひどくないにゃ~~~ん!」