わたち猫なの 47

「見かけの上では、住職と老女中、祖母と孫のようにしながら、心情的には若和尚の色女になってるのさ。そうして幸せに暮らしていたわけだが、そこへお前の飼い主だろ。婆さん、嫉妬の火炎放射器になって手当たり次第に火の海ってわけだな。総代長だって総代衆だって、みんなあの婆さんに丸め込まれてるさ。
 それが証拠に総代会で婆さんをやめさせる話になると、決まって皆反対するだろ。常識で考えたって80歳過ぎた婆さんを給金を出して雇い続けるなんざ総代会の連中もボケてるとしか思えないよな。肝心の電話番はしない。来客の用事は忘れる。本堂の傍で風のある日に焚き火はする。若和尚が頼んだ事は忘れて、しなくともいい事ばかりしてるんだからな。坊さんが堪らないから退職させてくれと総代会に訴えると何故かここで、お前の飼い主が話題になるんだよ。それとこれとは無関係でしょうと坊さんは必死に抵抗するんだが、連中は、坊さんの言うことなんか歯牙にもかけないのさ。しまいには、魔女と若和尚がわりない仲だなんて風評が立つと寺に傷がつくと言い出す奴がいるって始末だ」
「えーっ、にゃんなの?その話って……」
「それは皆、あの婆さんがそういう話を総代衆に吹き込んでいるのさ。この地方切っての古刹ともなれば檀家衆だって、それなりの由緒と資産のある家の主人達が寄り合っているわけだが、連中の程度の低さと品のないことは一級品さ。古刹の名が泣くぜ。ほんとにさ」ノラは自慢の髭を長い爪で整えながら、こんな事を言っていたの。あたちも呆れ返ってしまったにゃん。
「まるで生霊みたいね」
とあたちが言うとノラはさらに話を進めたの。