わたち猫なの 46

「それより問題なのはおばちゃんが女中の立場を認識してないなって事よ。私は寺と和尚様に用があって行くわけで、女中の話を聞きに行ってるわけじゃありませんからね」というような話を揺り椅子の上で、うつらうつらしながら聞いていたわたちは、ぱっと閃いちゃったの。主が言っていた意外な人物って、この老女中なんじゃないかちらって。どうも話を聞いているとただのボケ婆さんとは思えない切れの良さだもの。主も和尚様も二人揃って世間知らずなんじゃないかちらん。

 やっぱり、ここはノラの話を聞いて見なきゃとわたちはまたまたノラに会いにいったの。
「そんな話になっていたわけか。大体一緒に行動するとすぐ男女の仲だろうって発想は、言ってる本人の経験か、身近にそういう奴がいるかどっちかだよ。そもそも人間てぇものは自分の経験や体験からしか発想出来ない生き物と大昔から相場が決まってるのさ。特別想像力が豊かなら、田舎の寺の女中になんぞならないで、今頃はベストセラー作家になっていらぁな」
「それって当たってるう」
「そいつは全部あの婆さんの人生の結論さ。そもそもハロウワァクからの紹介で女中奉公に来たあの婆さんが、この寺の大黒同様の態度をするようになったのは、前住職の老僧が病気になった時、一切合財の介護をさせながらあの婆さんに、お前は俺の最後の女だなんて言ったもんだから、すっかりその気になってしまったのさ。それが遠くの施設に行く事になったので若和尚に乗り換えたんだろうな。ほんとは老僧について行かなきゃならない関係だったんだろうが、ここに残って若和尚にへばりついた方が得策と思ったんだろうよ」
「ふーん。そういうふうになってたの。外から見ただけじゃわからにゃいものなのねぇ。人の考える事って……」