わたち猫なの 40

 和尚様は、春に晋山式をする予定になっているので、招待客に茶振舞いをして欲しいと頼んでいた件について本格的に計画を立てましょうと話していたの。
 和尚様が、以前にいた寺の接待の仕方でやりたいから、それには主がぴったりの適役だと思ったんですって。そりゃそうよね。何でも親しく相談に乗って必ず約束を守る上、口の堅さは占星術師という商売柄抜群だもの。和尚様にしてみれば強い味方と思って、すっかり頼り切っているんじゃないかちら。
「それと困った事があるんですよ」
「皆さんの私への悪口は多少は沈静化しているんでしょ。今度は何が困った事なの?」
「実は手伝いのおばちゃんなんですよ」
 なんと老女中が和尚様に飛んでもない話を吹き込もうとしたそうなの。和尚様は通いの老女中が通勤するのに、同情心から自分の車で、寺から彼女の家まで送り迎えをしていたそうなの。
「あなたが総代長と会った翌日の朝、迎えの車の中でおばちゃんが、
『ねぇ。若和尚、世間の噂なんだけどさ。あの人はとんでもない女なの。この前、若和尚が留守の時に、あの人と一緒に草木供養塔にお参りに来た御老人がいたのよ。その御老人はあの人と同じ町内に住んでてね、あの人はその御老人の年金を巻き上げて暮らしているんだって話だったわ。だから草木供養塔を建てるような贅沢も平気でするのね』
 僕、思わず怒鳴っちゃいましたよ。おばちゃん。知りもしないで人の事を言うもんじゃないって。そしたら、『あら、世間の噂よ。皆知ってるわよ』
 おばちゃん。あの御老人は僕のお客様だよ。
『でも仲良さそうにしてたわよ』」