わたち猫なの 39

「ではお邪魔を致します。これは頼まれ物です」
 和尚様は大きな袋を主に差し出したの。
「頼まれ物? それって……。私何もお頼みしてはいないと思うのですが……?」
「はい、メールで鰹節を下さいっておっしゃったでしょう。それで早速お届けに参上しました」
「鰹節ですって?私は今日はメールを差し上げていませんよ」
「でも確かに魔女様からのメールでしたよ」
 にやっふふふふふ。うまくいったよう。和尚様と主は、二人で一斉にわたちを見下ろした。
「お前ね。犯人は、どーいうつもり?」
 べつにぃ。主のパソコンが開いていて、席を外した時、ちょっといたずらにキーボードを叩いて送信ボタンを押しただけだもん。こんなにうまくいくとは思わなかったにゃーん。
「これはもう除霊院様のなさることですから、鰹節を差し上げてください」
「本当に失礼しました。こんな事をするとは我が猫ながら呆れましたわ」
「実は私の方がご相談申し上げたい件がありまして、メールを頂戴しましたのはタイムリーだったんですよ」
「お母さん早くう、鰹節頂戴ニャーン」とわたちが騒がしく催促するので、和尚様は主に鰹節を与えるように促したの。
「ほんとに呆れたダークね。はいはい。御馳走様ってお礼してね」とお皿にいっぱいの鰹節を盛ってくれたのを、しゃりしゃりと食べながら耳だけはしっかり、二人の会話に集中していたの。
猫の耳って人間と違ってくるっと方向を変えられるから、少しぐらい離れていてもよーく聞こえるように出来てるのよ。