わたち猫なの 41

「彼は僕が前から、魔女さんにお寺へお誘い下さいとお願いしていたから、お連れ下さったんです。彼は関西の人でここらの出身じゃないよ。僕が留守にしたからわからないと思ってそういう事を言っちゃいけないよ。人の事を確かめもしないでそんなことを言うのはやめて下さい。怒るよ僕は、って言ったんですよ。
『あらそう。そうだったの』と言ったきり、おばちゃんは寺へつくまで、むすっとして黙り込んでしまいました。僕は本当に驚きましたよ。この寺へ入って、寄る辺はなし、西も東もわからなかった頃、唯一親切にしてくれたのがおばちゃんだったんですよ」
「なるほど。それで……」
「彼女のおかげで、ここに居続けられた部分もあるので、僕はおばちゃんを大事にしようと思っていたんですよ。大雨の中を傘を差して自転車でふらふら出勤してくるのを見て、とてもそのままにしておけずに送り迎えをするようになったんです。なんといっても80歳を超えてますもの。事故にでもあったら可哀相ですもの。それが、魔女さんに嫉妬してある事ない事、いや、全くない作り話をされてびっくりしましたよ」
「えーっ。この私が老薬剤師先生の愛人ですって? 何それ、どこからそういう発想が出てくるのかしら」
 わたちも聞いてびっくり見てびっくりとはこの事だ、にゃゃゃゃーん。