わたち猫なの 37

 第一、主は御寄進に関わっては誰にも迷惑を掛けていないんですもの。草木供養塔を建立する費用だって、主が自前で支払っているし、誰にも奉加帳なんか回していないし、それどころか、今回の事を始める前にはちゃんと星の動きを確かめて、わたちにこう言ったのよ。
「ふーん。意外な人物の妨害に遭う…ねえ。そういう期間に入っているわけか。
 誰かが私のする事を邪魔してくれるというわけね。そういう傾向があるなら、これを避けるには沈黙こそ金なりというわけね。ダーク、わかった? 私はこれらを誰にも言わないで実行するわ。お前の実家の南の寺だって、気分を害するかもしれないものね。何で御寄進が北の寺なんだって思うかもしれないでしょ。あんなに長年親しく交わっていたのに、ある意味親族同様に交際しているのにってね」
「わたちの実家に限ってそんな事はないにゃーん」
「当然そう信じてるわ。でもねぇ……。私が単純に築地塀が好きだの、過去世と今生を繋ぐ原風景だなんて言っても理解不能だしね。私も勿論そうだけど、人は皆自分中心にしか物事を考えないでしょ。私が私自身のもので独立自尊の存在だと主張してみても、相手は田舎のコミュニティを牛耳っているわけだもの、そんなふうには思わなくて、相談もなしに私が勝手な事をしているなんて思い込まれる事もあるじゃないの。どちらにしても、不快な思いをするであろうと予想出来るわけだから、兎に角黙っているわ。それに意外な人物って見当も付かないしね。意外だっていうのは私が信じている相手という事でしょ。思い当たらないし、思い当たるとしたら、意外なんて言葉は不必要だものね」