わたち猫なの 38

「それもそうにゃんだけど…」
「それにお前の実家には古い草木塔があるのよ。知ってた?」
「ちらにゃい」
「お稽古の時、若奥さんには北の寺に草木塔を建立する話はしてあるの。同じ場所に二つも同じ搭はいらないしねって。魂入れは南の和尚様にして戴く事もこちらの和尚様と私の間では決まってるの。ただ時期が寒中だし、南の和尚様は土星の所為で具合が悪いから、そちらは春暖かくなってからお願いする心算なの」
「それにゃら問題はなさそうにゃん」
「でもね、星の示す事は必ず実現するのよ。用心深くしてもし過ぎるという事はないものなの。邪魔されてもきっと思い通りに成る筈だしね」
 というような話を草木塔建立の前に主としていたので、いろんな事が起きてもにゃんにも不思議じゃにゃいとわたちは思っていたの。

 様々な事があっても主の計画はきちんと実現し、いけばなのお弟子方が集まって、納経をした日も真冬だというのに素晴らしい青空だったの。北の寺の御本尊様はよっぽど嬉しかったんでしょうね。雪の中に凛として立っている立華ってそりゃ綺麗なのよ。にゃんたって、立華は須弥山の模倣だもんね。

「ごめん下さーい」
「はーい。あれっ、どうなさったの? まぁどうぞお上がり下さいな」