わたち猫なの 29

 そうして最初の工事から一週間後、やっぱりとてもいい天気になったの。昨日までの荒天はどこへいったやら、空は青く晴れていて予定通りに五輪塔と石の花器が設置されたの。カロートの蓮花はとてもお洒落で主は大喜びだったみたい。わたちは留守番していたので実物は見なかったけど、現場の写真を覗き込んでなーるほどって感心したわ。和尚様は出張でお江戸へ行っていたので現場にはいなかったみたいよ。帰ってきたら草木塔が建っているのを見て、近寄って思わず手を合わせたんですって。家へ来て言ってたんだけど、
「寺へ戻ってきて、供養塔を見た途端に、草木の魂達が集いあっているような気がして、思わず合掌してしまいました。あれっ、僕まだ魂入れの拝みをして
なかったよね。なんだかもう草木達が喜んでいるようでしたよ」
主の点てた濃茶をゆっくりと飲みながら和尚様は本当に嬉しそうな満面の笑顔だったの。
 和尚様は主と納経をする時の予定などをいろいろ打ち合わせて帰って行ったの。主と和尚様の話をわたちは丸くなって耳だけで聞いていたんだけど、その話の中で、あんなに喜んでいた総代長さんが、急に歯切れが悪く煮え切らない話し方をするようになったのが気にかかる、という内容が含まれていたのがわたちもなんだか気になって仕方がないニャーン。ちょうど満月の夜なので、定例の猫会議もあるし、どうせノラとも会えるわけなので、一足早くノラを訪ねて行ってどんな事になっているか聞いてみたの。