わたち猫なの 24

 草木塔寄進の件について、和尚様にお願いして内緒で話を進めた理由を色々説明すると、総代長さんは「さもやあらん。それならば話がわかる。あなたは大人としての配慮をしてくださったと、こういうわけだな。いや、それにしても有難い。今時には滅多にない御奇特な事です。人の悪口は言いたくないが、何しろ前住職の老僧があのとおりなのでな、この寺も金がなくって困っているような状態なんですわ。当節は何に付けても金の掛かる話ばかり…………。前が前だから、檀家の皆さんも呆れ果てていて、どうにもこうにもならんのですわ。現住職はわしから見れば孫みたいなもんだから、及ばずながらわしも何とか力になろうと思っとるようなわけです。ひとつよろしくお願いをする」と言ったんですって。和尚様がこの一件を総代長に内緒にしていたことには多少不満があったらしいけど、主の説明ですっかり納得したみたいにゃーん。
 そして工事の翌日は猛吹雪だったの。その翌日もそのまた翌日も天気は大荒れで、高速道路は閉鎖されるし、新幹線も立ち往生。これじゃ次の工事はどうなるのかちら。でも主は毎日鼻歌交じりで、いろんな仕事を手際よく片付けていく。あんまり気にしないでいたほうがよさそうね。ちょっとばかり晴れた日に、わたち、総代長さんが言っていた、前住職の悪口になるっていう具体的な話を聞こうと思いついて、ノラに会いに行ったの。わたちは携帯電話を持たせて貰ってないし、ノラはわたちより原始的な猫本来の暮らしだから、用がある時は直接会いに行ったり来たりするしか方法がないわけなの。