わたち猫なの 25

 主に内緒でキャットフードの小袋を咥えて持って行ってあげると、ノラは大喜びでカリカリ音をさせながらせっせと食べおえて、口の周りを長めの舌でベロリベロリと品悪く舐め回しながら話してくれたの。その話によると、前住職の老僧って人間不信で守銭奴だったんですって。でもそれはわかるような気がするわよね。誰も信じられなくなったら、頼りになるのはお金しかないもん。猫に小判なんていうけど、あれは嘘っぽいわ。意識の低い猫ならともかく、わたちは何と言ったって猫又の生まれ変わりだから、お金の価値については充分にわかっているつもりよ。その辺の低能猫と一緒にされたくないもんね。
 老僧は寄る年波には勝てず、今の和尚様を迎える事にして養子縁組をしたんですって。でもね、和尚様がこの寺に来てからこっち、ずうっと、いびりの日々だったみたいよ。寺で必要な支払いのお金を、ないって言うんですって。二言めには「金はないっ!」と言うのが前住職の口癖だったみたい。でも本人は大の骨董好きで、いろんなものを買い集めていたし、葬儀の度に法号料も吹っかけていたからお金がないはずはないんだけど………。その証拠に、今の和尚様がこの寺に来る数年前、強盗が入ったことがあるんですって。
 口にガムテープを貼られて、荒縄で縛り上げられたうえ、現金数百万円とロレックスの腕時計と骨董品が盗まれたんですって。お母さん知ってたぁ?
「知ってるわよ。毎日全国版テレビニュースで報道していたもの。私の友人のむっつり右門も鑑識係をしていたから、現場にいて作業中の姿がテレビ放映されたのを見てるもの。こんな田舎じゃ滅多にない事件だったから周囲の人はびっくり仰天よ」