わたち猫なの 14

「それにね、彼とはどこかで会っているのよ」
「へぇーどこで?」
「ずうっと思い出せなかったんだけど、それがわかったのは私が会葬者として出席した母の友人の葬式だったの。もちろん導師じゃなくて7人もいる僧侶の一人だったんだけど、眺めているうちに、あーっインドのバラモンだってわかったの。そうだったのね。それで懐かしい気分になったんだわ」
「そう言えばお母さん、何枚もサリーを持っていたっけね。若い時はそれを着て街を歩いていたんでしょ」
「そうなの。前にね、親類の兄弟二人がカルカッタの空港で出会った両替商のおばちゃんにレートを誤魔化されそうになったことがあったの。お兄ちゃんの方は数字の人なので騙されずに済んだんだけど、建物の角を曲がったら、またそのおばちゃんが先回りしていて、リムジンバスのチケットを買ってくれって言ったんですって。厚かましいでしょ。でもね、そのインチキ両替商のおばちゃんが何と私にそっくり瓜二つだったんですって。それでとっても他人とは思えないのでチケットを買ってやったんですって。現地からの絵葉書を貰ってその話を読んだ時には涙が出るほど爆笑したの。あら、話がそれちゃったけど私はどこで和尚様と出会ったのかがわかって、すっかり安心したの。わからないことってなーんか気にかかるじゃないの」
「ふーん、そういう御縁だったのね。それで和尚様にも過去世を思い出して御覧なさいって言ってたのね」