わたち猫なの 13

 それで今の和尚様が後継者としてこの寺に来ることになったらしいの。  28歳ぐらいでこの寺に入って5年ですって。施設に行くまでの前住職にお仕えしたわけだから、今時の青年にしちゃ随分辛抱強いわよねぇ。
「お母さんはどこで和尚様と知り合ったの? 花店を持ってるからあちこちの寺に出入りしてるし、どこかの寺で紹介されたの?」
「そうじゃないわ。よく行くパスタ屋で知り合いになったの。私は最初から住職だって知っていたけど、相手の方は全然知らなかったの。私に声を掛けられて、最初は私とどこで会ったのか随分考えたみたいよ。どこの葬式であったのかなぁとか、法事だったかしら? お墓参りに来ていたのかなあ。うちの役員さんの家族の誰かかなとかね。下手の考え休むに似たりって知らなかったみたい。要するに街でナンパしたっていうわけよ」
「えーっ、でもね、ああいうのってお母さんの趣味とは程遠くない? お母さんが好きなのは安倍晴明を演じた狂言師みたいなのでしょ。それに御贔屓筋はダーティハリーだって言ってたじゃないよ」
「ダークや、人を外見で判断しちゃ駄目よ。しばしば駄目でない時もあるんだけど……。彼は稀に見る美男僧なの。そのうち魔女の手妻やバテレンにかかって余分なごみが体から出て行けば、見るからに素敵になるんだから」
「ふーん。そういうものなの??? わたちにはどう見たって転がった方が早いような気がするんだけどにゃーん」