わたち猫なの 45

「私は、はいはい大丈夫よ。と言うんだけど、どーこか変ねぇ。歳のせいかしらとも思ってみたけど、どうも私にはわからないわ。草木供養塔を建てる話の時は、『お寺のためにしてくれてあなたは素晴らしい人だわ』って猛烈に褒め転ばしてくれて、『お金が掛かるでしょ。物入りよね。私もお祝いして上げるからね』と執拗なほど会う度に繰り返してたの。私にとってはおばちゃんは寺の女中さんなわけで、あなたのように過去世からの友人でも何でもないわけだから、何でそんなに拘るのかは??? と言うほかないわ」
「その話は何度も僕の居る所でもしてましたね。それで何かお祝いを出したんですか?」
「いいえ。リップサービス最大級で、建立後は忍法知らん振りよ」
「あんなにお祝いの話をしていたのに、出さなかったんですか?」
「ええ、なんにも頂かなかったわ」
「信じられませんね。あの言い方からすれば、当然金一封は差し上げたと思っていましたよ。そうだとすると凄い演技力ですねぇ。
 実際のところ僕も困るんですよ。あなたとこの前、鬼界ヶ島の話をしていたじゃないですか。いつもは来客があると後ろに控えているのに、何故かあなたがおいでになると、テーブルの横に座って話に入るでしょう。まぁ今日は特段の話でもないしと思って黙っていると、身を乗り出して自分の事を喋りまくるでしょ」
「おばちゃんが『あたしゃ寺にくるまでは踊りのお師匠さんをしてたのよ』って言うから、サービスで俊寛僧都の話をしてあげたんだけど本人俊寛を知らなかったみたいね」
「それでもう、あなたがお帰りになってから、おばちゃんは超不機嫌になって悪口雑言ですよ。『何さ、少々知識があるからって、知ったか振りしてひけらかしてさ。気に食わないったらありゃしないわ』とかぶつぶつ言ってるんですよ」
「いいじゃない。ひけらかす知識もない人に言われたって痛くも痒くもありませんよ」