わたち猫なの 44

「してるのよ。私は聞いても喋らないから、他所へ伝わる心配はまったくないけどね。おかしな物言いは前からよ。草木供養塔の工事に来ていた職人さん達に食事を出した時、あなたも一緒に食べてたでしょ。
『それを全部あなたが支払うなんてとんでもない。うちの寺で出さなきゃなんないのに、若和尚ったら男の癖に女のあなたから御馳走になるなんて、気の利かないったらありゃしない。あんた、若和尚からお金をきちんと貰いなさいよ』と言われたから、こう返事したの。あら、私は供養塔建立の施主だもの、いいんですよ。焼きそばぐらいでどうって事はないじゃないの。そうしたら、
『いやいや、女のあなたにたかるなんて、そりゃいけない。寺でお金を出さなくちゃ』って言うのよ。気に掛けて頂いてどうもねって、返事しておいたんだけど、一事が万事で、おばちゃんの言動は女中の範疇を超えてるって感じるわ。
お花だってそうよ。草木供養塔の花を入れ替える時、余分に持っていくから、残ったのを玄関の花瓶とかに入れるでしょ。するとおばちゃんが言うの。
『いつも悪いわねぇ。花代はちゃんと貰いなさいよ。今時、花は高いもんなんだから。あれで若和尚は金は持ってるからね。あんた、ちゃんとお金は貰わなきゃ駄目よ』ってね」