わたち猫なの 35

「またまた総代さん。そんな事おっしゃって。寺というものは御布施や御寄進で成り立つものじゃありませんか。要は私に問題があるとおっしゃりたいのではありませんか?」
「そうではない。決してそうではないのだが……当節寺へ御寄進下さるのは有難く、御奇特な事とわしは感謝申し上げているのだが………」
「それじゃ私だからいけないとおっしゃる? これが、社会的に力のある方や有名人ならば、役員の方達も住職や総代さんを謝らせたりはしなかったということでしょうか」
「何分にも貰ったのは有難いが、下さったあなたを気に食わないと言う者もおりましてなぁ。わしも困っとるとこですわ」

 坊さんは会話に口を差し挟めず、止むなく身振り手振りでお前の飼い主に合図を送っているんだが、その有様は、おかしいやら気の毒やらで大した見物だったぜ。

「でもすんなり建立出来ましたから、こちらの御本尊様には喜んで頂いていると、私は確信していますもの。総代さんも、そのように考えて下されば有難く思いますわ」
「何分にも気を悪くせんで下され。わしも言いたくはなかったのだが、人の気持ちは色々なのでな。今後とも何かと寺のために、又、若い住職のために、お力を貸して下されば有難いものだと、思っておりますわ」

 という爺様の飛んでもない発言に対してだよ。内心はともかく、お前の飼い主は何を言われてもしれっとしているじゃないか。見上げた根性だよ。