わたち猫なの 27

 人のお墓なら、何十年かに一度は納骨するから、骨堂の蓋を開くわけだけど、草木供養塔ならもうそれはないんでしょ。半永久的にそのまんまで、地震で倒壊でもしない限り、カロートの中を見ることは出来ないわよね。なんて洒落た美意識かしら。主は、そこに蓮の花を彫って頂戴って言ったの。
 カロートの中にどうやって経典を納めるのかと思っていたら、それが孟宗竹なのよ。どうりでこの間あたりから、花店の作業台で太い青竹を鋸で切ったりしていたわけね。花市場がこんな大きな竹を届けてきたと思っていたら、実は主が寺の裏庭から切り出してきたんですって。友達のノラが言ってたもの。
「お前の飼い主って相当変わってるね。珍しくGパン姿でやって来たと思ったら、雪の中を裏庭の方へ行くんだよ。何しに来たのかと思って後ろからついて行って、離れたところから見ていたんだ。そうしたらポケットからスケールを出して竹の節の間の長さを測っているんだ。そして独り言さ。短い、長すぎる、表面が穢い、とか文句を言いながら雪ででこぼこの庭を歩き回っているんだ。目当ての竹を見つけると、綺麗、嬉しい、役に立ってね。とか何とか言いながら、尻ポケットから折りたたみ式の鋸を取り出して、屋根まで届くような大きな竹を真横に切断したんだ。それを二尺ばかりの長さにして枝を払うと、鋸を尻ポケットに差し込んで、切り出した竹を肩に担いで歩き出した。現代版竹取物語の嫗ってわけだ。お前の飼い主のことだから、自分がかぐや姫だと思ってるかも知れんよ」