わたち猫なの 22

「それはいいんだけど、吹雪よお母さん。石工の皆さん仕事が大変じゃあないかちら」
「大丈夫。必ず晴れるから」
「えーっ。天気を思い通りにしようなんて、空海さんみたいなわけには行かないんじゃあない?」いくらお母さんが魔女だって世の中には出来る事と出来ない事があるんじゃなぁいとわたちは心の中で呟いたの。でもね、工事を始める前日から晴れたのよ。主はスコップを持って出かけようとしているから、きっと寺へ行くんだと思って先回りして車のボンネットの上で待っていたの。
「あらお前も行くの。信心深いのね」と主は言って、一緒に出かけたの。行って見たら凄ーい雪。わたちは足が短いからラッセルしないと歩けないと思ったら、目的の場所の前は綺麗に除雪してあって道が出来てたの。本堂に向かってそうなっているのは、寺で何か行事でもあったんだわ。一間四方ぐらい除雪すれば楽勝コースね。と、主は二尺もある雪をアルミのスコップで掘り始めたの。時々ポケットから金属製の巻尺を出してビーッと延ばしては、もう少しね。とか独り言を言っている。巻尺の端っぽを押さえて手伝おうとしたら、
「あっちで待ってて。猫の手は有難いけど、どう見たって巻尺にじゃれているだけにしか見えないわ。それに手元が狂ってお前をスコップで撲殺したりしたら困るからね。寺の境内で殺生したり血を流すのは御法度なのよ」そりゃそうね。わたちだって主の手に掛かるようでは、猫又の生まれ変わりでこの世に来た甲斐がないもん。そこで主の言うとおりわたちはその辺を偵察したり、友達のノラと雉を追いかけたりして遊んでたの。